イケメンとの出会い

おしゃれっ気のない、前横後ろ、どこから見てもパツンと切りそろえられた髪の毛は、時に寝癖がひどい。

 

まじめすぎる制服の着こなしに、化粧してきてる?と疑ってしまうような薄化粧。

 

 

このまじめすぎるモリクニさんと私は、仲がいい。

 

 

本人に直接「私たちなぜか仲良しですよねっ」なんて、先輩に向かって言えるわけないのに。

 

言ってしまうのが私の長所でもあり短所でもある。と、つい先日モリクニさんに咎められたばかりだけれど、そのときのモリクニさんの返事は。

 

 

「そうね。何一つ共通点は見出せないけど」

 

 

ニコリともせずにそう言った。

 

 

 

誰もが始業準備に追われる中、

 

ーーーピーンポーン.....

 

 

間の抜けたようなインターホンが店内に鳴り響く。

 

 

男性社員までもが「新人が来たか?」と一気にざわつき始めた。

 

 

皆、私以来の新人に興味津々のようだ。

 

 

「すみません」

 

モリクニさんに小さく詫びて立ち上がった。

 

はいはい。少々お待ちください。

 

 

もちろん、インターホンに応対するのも私の仕事。

 

でもそれも今日まで。明日からは新人くんに任せよう。

 

 

少し浮かれながら、心の中でそう呟きながら、支店の一番奥に位置する、支店長とその次に偉い次長の席の前にある受話器を取り耳に当てた。

 

 

「いらっしゃいませ」
相手は誰かわからない。

 

大方の予想通り新人くんなのか、はたまたお客様なのか。

 

 

「おはようございます。今日からこちらに配属になった早瀬と申します」

 

「今開けますね。少々お待ちください」

 

 

予想通りの新人くんで、インターホン越しの、少し低めの男らしい声にほんの少し胸がときめく。

 

 

「大山さん、声はいい感じですよ」

 

パートの重鎮、大山さんはギーーっと音をさせてこっちを振り返る。

 

『ないない』と、大げさに頭を横に振る。

 

 

「おいおい。蒼井さん彼氏いなかった?」

 

 

営業間の最後列に座る、西支店長からつっこまれた。

 

 

「彼氏はいませんって言ったじゃないですか。その発言セクハラですよ」

 

 

笑顔で支店長に反論しながら裏の通用口へ向かう。

 

たとえ相手が支店長でも、臆することなく軽口が叩けるのは、明るく温厚な支店長の人柄と、アットホームな支店の雰囲気と、私の、この性格。
小走りで裏口に続く廊下を抜けて、ガチャリ、ガチャリと二重の鍵を解除した。

 

 

さらにドアノブを両手でひねり押し開けると、眩しい朝日が飛び込んできて目を細めた。

 

思わず、目を隠すように右手を顔にかざした。

 

 

 

「おはようございます。よろしくお願いします」

 

 

先ほどのインターホン越しよりも、さらにいい声。

 

遠慮も何もない太陽に光りに負じと、目の前の新人くんの顔を見上げた。

 

 

「お、はよう、ございます。蒼井です。よろしくお願いします」

 

 

 

イケメンキター!!!

 

 

 

推定身長180超。

 

日光の関係で茶色く見える、くせっ毛のようなおしゃれヘアは長すぎず清潔感があり、社内規則の範囲内。

 

目がパッチリと大きくかわいくて。

 

顔整いすぎ。

 

顔ちっさ。

 

 

ほぼ黒に見えるダークグレーのスリムスーツをサラっと着こなし、水色とライトグレーの細いストライプのネクタイもセンスがいい。

 

 

足長っ!

 

 

やばいです、大山さん。オタク系だなんてお門違いです。

 

 

でも私は、もうイケメンは好きにならないって誓ったから、関係ない。